« 2008年01月 | メイン | 2010年01月 »

原色マユビト図鑑

2009年01月21日 加古雅彦:コカ, 大地の芸術祭, 繭人形

(2009 コカ 「原色マユビト図鑑」 ワード)

マユビトの繭人形は、越後妻有・蓬平の「繭の家」のミュージアムグッズです。

・「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ」において、「まつだい雪国農耕文化村センター農舞台」「キョロロ」「キナーレ」「繭の家」にて販売しています。

・「大地の芸術祭」期間外においては、「農舞台」「JR越後湯沢駅(2009/12/19~)」にて販売しています。

・おかげさまで好評につき、品薄状態が続いています。ありがとうございます。

・利益はすべて地元に還元されています。

・「原色マユビト図鑑」は、マユビトの解説です。

**********

マユビトに使われている繭は、すべて蓬平集落で養蚕してできたものです。またマユビトの繭人形も蓬平集落のお母さんがたが1つ1つ手作りしたものです。蚕を育てるところから始めるため、急な増産ができません。もうしわけありません。

・かつて地域の産業であった養蚕が、「大地の芸術祭」で形を変えて復活し、継続的に生産するに足るグッズ販売量に達することができたのは、「養蚕プロジェクト」にたずさわる者として、うれしい限りです。

・蓬平集落にはお店は1軒もありません。自販機すらありません。つまりいくら人で賑わっても、蓬平集落にお金が落ちる仕組みにはなっていません。そこでマユビトを考えました。マユビト制作を時給で計算すると、もうとても信じられないくらいの薄給なのですが、少しでも地元にお金が落ちたらいいなと考えています。

・マユビト1体500円の売価として、組み立てるのに早くて30分かかります。すべて売れたとして1時間1000円の売上です。そこから販売手数料を何割か引き、材料費を何割か引くと、どれだけも残らないのがわかると思います。しかも、組み立てるだけではなく、蚕から育てているわけですから、組み立てる以上の時間と手間がかかっているわけです。

・人件費も材料費も安い外国で作ればもっと利益は出るでしょうが、それだと地方の芸術祭の意味がありません。

**********

・「マユビト」という名称は、「マレビト(客人、稀人)」と「繭」の造語です。「マレビト」とは、集落の外からやってきて、去っていく来訪神をさします。また神の格好をした芸能者も「マレビト」と呼ばれました。「大地の芸術祭」では、新潟県外からも多くの作家さんやお客さんが来られます。そこでグッズには「マレビト」という単語を連想する名称をつけようと思いました。

・日本には「鐸(サナギ)」と呼ばれる神器があります。玉の入っていない鈴のようなもので、日本史の教科書に必ず登場する「銅鐸(ドウタク)」が有名です。風が吹き込むことで、かすかに音が鳴るしくみになっています。その「鐸」が「器(ウツワ)」の原型といわれています。

・ウツワの「ウツ」はウツロの「ウツ」です。そして日本には「ウツロなものから何かが生まれる」という思想があります。例えば空っぽのものに神が宿ったり(依代:ヨリシロ)、竹の中に赤ん坊がいたり(竹取物語)。

・鐸(サナギ)は、昆虫の蛹(サナギ)にも通じます。中身が何もないように見える蛹から蝶が羽化するからです。

・繭はウツロであり、サナギも入っているので、繭を使ったグッズを作るならば、魂を宿したキャラクターグッズがむいていると考えました。実際、繭は無機質な工業製品ではなく、蚕の命の形とも言えますし。

**********

・日本語の基本リズムには「四音」がかかせないそうです。「リストラ」や「コンビニ」など、短縮形に四文字が多いのはそのためだそうです。そこでマユビトの名前も親しみをもってもらうために全て四文字にしました。

**********

・日本の妖怪や九十九神(ツクモガミ)は、人の理解を超える現象や自然への畏怖が具現化したものです。言い換えれば、「謎で説明できないもの」を、「謎の存在として説明したもの」です。「百鬼夜行」「遠野物語」「鬼太郎」など、日本人は妖怪を身近に感じてきました。

・現代において、宇宙人の存在は信じても、妖怪の存在を信じる人は少ないでしょう。一方で疑似科学や未成熟科学を用いた健康法や実用書が巷に溢れてかえっていたり、無宗教の人でも毎朝の占いを気にしたり、メッカ年間巡礼者数をはるかに超える人が初詣に行ったりします。これは、「人間は何かを信じたい、願いたい生き物である」ということにほかなりません。害のないものならまだしも、科学のふりをして悪徳商法をするのはいただけません。

・それに比べて妖怪はもともと怪しい存在であり、禍福の二面性をもっており、厳格な宗教教義もなく、娯楽性すらあります。「となりのトトロ」が示したように現代においても、妖怪は人生の困難さを緩和する役割(移行対象)を果たすと考えます。

・現代の創作妖怪は「口裂け女」とか「トイレの花子さん」とか怖いものが多いですが、マユビトは疑似科学的なことをマジメに実践して失敗したり、実用性の低い弱い不思議な力を持った存在にしようと考えました。人に信じられなくなった妖怪が、人が信じるようになった疑似科学を取り込むことで、占い程度の信頼性を回復し、かつ疑似科学への妄信にも懐疑的に客観視できるようになるわけです。

**********

マユビトは蓬平周辺の文化を紹介する役割も担っています。これは、一般的な地方キャラクターと変わりありません。違いがあるとすれば、性格を意図的に悪くしているところです。

・僕は「人間は生きるために悪いことを忘れやすくできている」と考えています。つまり「原色マユビト図鑑を読んだ人が、時間の経過とともにマユビトの悪い性格は忘れても、蓬平周辺の文化についての記憶は残るのではないか」と考えたわけです。あえて性格解説に読み飛ばすような難解な単語や理屈を入れたり、名前に欠損概念を含む単語を使いました。

・記憶から「姿が消える」という意味で、マユビトは妖怪なのです。

・ただ、「妖怪」という単語は悪いイメージが強く、子供の「夭怪」という単語は馴染みがなく、「精霊」は日本では「祖霊」をさすので、日本の民間信仰にない「妖精(トロール)」を使うことにしました。

**********

マユビトの性格は当初友人・知人・元彼女などをモデルにしていましたが、悪い性格を後から肉付けしていくうちに、僕自身の色々な未熟さをあらわしたものが多くなってしまいました。

・「原色マユビト図鑑の作成」は、いつしか「自分の未熟さを体系化して把握する作業」となり、自分がいかに人々から助けられて生きているかを改めて認識することとなりました。同時に、マユビトも未熟な存在のオンパレードになりました。

・そして「未熟さゆえに助け合おうとするマユビト」が、「その未熟さゆえに人の助けにもなるのではないか」と考えるようになりました。あらためて、扶助行為とは余力でするのではなく、自らが足りないからこそ、他人の足りなさを身近に感じ、扶助するのではないかと感じたからです。

・「大地の芸術祭」はこへび隊やサポーターや集落のみなさんに支えられています。また作家だけでは絶対に作品は成立しません。マユビトが相互理解・相互扶助に役立つグッズになれたらいいなぁと願っています。

*************

・マユビトは芸術作品ではありません。作品はあくまで「繭の家」のほうです。マユビトは実用性もほとんどありません。旅行の思い出を呼び覚ます「お土産の置物」という装置です。民芸品が貝や木などかつて身近にあった親しみやすいものでできているのと同様に、繭でできています。張り子のような味のあるタッチはありませんが、かわりに性格の肉付けをしています。

古道具振り子時計

2009年01月20日 UQ展, 加古雅彦:コカ, 古道具

(コカ 「古道具振り子時計」 2009)

・昭和初期に作られたアンティークの振り子時計を、トアロードの「まるきや」で買いました。壊れていたので激安でした。

・「まるきや」は神戸北野ホテルの北側にある骨董屋さんです。久坂葉子著「ドミノのお告げ」「幾度目かかの最期」にも出てきます。

・この振り子時計はもともと宮型掛時計でした。彫刻部分を取り、木目シールを剥ぎ取り、古いニスを削り、白ペンキと透明ニスを塗りました。

・ムーブメントは電池式の新しいものを入れています。

・針も短いかわいらしいものに変えました。秒針もつけられるのですが、合わないのでつけていません。

(コカ 「からくり蛙」 2009)

・振り子時計のゼンマイと歯車の部分です。ある意味レディメイドですね。

・故障部分も修理済みです。八日巻きとか二週間巻きとかはわかりません。

・これだけかっこよければ、何も手を加えなくてもオブジェになります。

トグルボタン・モビール

2009年01月18日 UQ展, 加古雅彦:コカ, 古道具

(2009 コカ 「トグルボタン・モビール」 トグルボタン、1mm径ピアノ線)

・神戸の古道具屋さん「sori」で買ったダッフルコートのボタンを使って、モビールを作りました。

・モビールを考案したカルダー(コールダー)のモビールの形を真似ています。

・ラタンボトルを吊るして、花を生けたようにしています。

・木製のトグルボタンは立てて並べると西表島の海面を走るウミショウブの雄花のようです。

マユビト フック

2009年01月17日 UQ展, ヒゲ, 加古雅彦:コカ, 古道具, 繭人形

(2009 コカ 「マユビト フック」 A3,A4パネル 麻 糸巻 サンゴ ガラス乳棒 ガラス瓶 ガラスペン等) 

・ぶらさげていたマユビトが全部売れてしまったので、ぶら下げるものを変えました。

・神戸の古道具屋さん「sori」で買ったガラス製の乳棒、「Like Like」で買った糸巻きです。
・パネルに貼ってある麻の生地は、実は「ku:nel」の付録のハンカチです。

・ヒゲ君が水納島で拾ってきてくれたサンゴ、「sori」で買ったガラスペン、「Rollo」で買ったチェコボビンです。

ワイヤーワーク

2009年01月16日 UQ展, 加古雅彦:コカ

(2009 コカ 「四葉のクローバー」 結束線 再生ガラスの花瓶)

・建築資材の結束線で四葉のクローバーを作りました。

・沖縄本島の「日月ガラス」の花瓶です。

古道具建具

2009年01月11日 加古雅彦:コカ, 古道具

(2009 コカ 「古道具建具」 切り文字 扇風機カバー一部 古布)

(2009 コカ 「古道具建具」 切り文字 トグルボタン)

(2010 コカ 「古道具建具」 切り文字 真鍮・磁器スイッチ デニム ルーターガイド)

・建具を白く塗って、栄町の古道具屋さん「リケリケ」で買った切り文字をつけました。

・真鍮の切り文字の錆が付かないように、ニスを塗っています。これくらいが地衣類に通じるものがあっていいかなと思っています。

・木の彫刻は、トアロードの古美術店「まるきや」で買ったボンボン時計についていたものです。白く塗って天使の羽根っぽくしています。

マユビト マグネットタイプ

2009年01月08日 BON, 加古雅彦:コカ, 大地の芸術祭, 繭人形

(コカ、BONさん、キヨミさんをはじめとする蓬平集落のお母さんがた 「マユビト マグネットタイプ」 2009)

・蓬平集落で繭を作り、コカがキャラクターデザインし、BONさんがパッケージデザインし、キヨミさんをはじめとする蓬平集落のお母さんがたが作ったマユビトです。

・好評につき追加生産をしているのですが、品薄状態が続いています。

・芸術祭期間中は「繭の家」「農舞台」「キョロロ」「キナーレ」で販売していますが、芸術祭期間外は品薄のため、「農舞台」と「越後湯沢駅構内ビジターセンター」のみで販売しています。

・くわしくはマユビト図鑑をご覧ください。

第4回 マユビトづくりワークショップ

2009年01月06日 加古雅彦:コカ, 大地の芸術祭

(O木さん、蓬平のお母さんがた、子供たち 「第4回 マユビトづくりワークショップ」 2009)

・2009/09/20に「繭の家」にてマユビトづくりワークショップが行われました。

・毎回、こちらの想像を上回るマユビトができあがります。

ブリコラージュ

2009年01月05日 UQ展, 加古雅彦:コカ, 古道具

(2009 コカ 「古道具帽子掛け」 ボウル、編み棒,皮紐、糸巻、鋲、仁丹丸薬匙)

・使わなくなった木製のボウルの表面を削り、帽子掛けを作ってみました。

・「夜閒工房」のロゴの「×」にかけてあります。

・糸巻は栄町の「リケリケ」で買いました。皮紐で連動して回転します。

(2009 コカ 「ドアノブ」 布,ビーズ,皮)

・ドアノブの塗料がはげたので、古布を貼り付けました。

・変形キャンバスより布を貼るのが難しかったですね・・・。

・皮は古い筆入れのチャックの端です。

(2009 コカ 「引っ掛けシーリング・カバー」 茶筒)

・ソケットとコンセントが角型と丸型で合っていなかったので、茶筒のフタに穴をあけ、カバーにしました。

・一保堂の茶筒のフタが(長いということもあり)サイズ的に一番ピッタリでした。さすがというかなんというか。

・トタンをとめるネジについているドーナツ型のスポンジを、カバーのストッパーに使っています。

・錆は自然につくだろうと考えています。

(2009 コカ 「猫よけ旗」 編み棒,ネームタグ,桂)

・使わなくなったモノを組み合わせて、小さな旗を作りました。

・これは猫が本棚に跳び乗らないようにするためのものです。猫はモノを倒さないように歩くので、こういうモノでも結構有効です。

(2009 コカ 「鎖樋」 プラスティック・浮き球,ボールチェーン)

・ヒゲ君に沖縄の海岸で拾ってきてもらったブイをぶらさげています。

・ヒゲ君は同じ色にしたかったみたいですが(それですごく海岸を探したそうです)、僕はちょっとだけ違うくらいがいいのではないかと思っています。

・ボールチェーンはジュースのおまけについていたストラップの一部です。

・一番下のブツブツがついたブイだけはポートタワー北の「meguri」で210円で買いました。古道具屋さんでビン球以外のブイを見たのは初めてです。

・「16」の切り文字は、栄町の「リケリケ」で1つ¥300で買いました。好きな字体です。

L・EGO

2009年01月01日 UQ展, 加古雅彦:コカ, 古道具

(2009 コカ 「L・EGO」 LEGO、B5パネル)

・実家から子供の頃に遊んでいたブロックを持って帰ってきました。

・子供もいないし、友人にあげるにも汚れているので、作品にすることにしました。

・パネルから落ちないように、パネルの裏側にもブロックがついています。持っているレゴのほぼ全てを使い切ることができました。

・車輪は裏側でOリングで繋がっているので、連動して回ります。

ワードでお絵かき

(2009 コカ 「ワードでお絵かき」 ワープロ)

マユビト図鑑の挿絵を描くにあたり、実験的に描いてみました。

・Wordのオートシェイプを使って描いています。

・基本的には大きめに描いて、「オブジェクトの選択」をして、「グループ化」して、縮小しています。

・Wordにはスプレー機能がないので、透過性のある塗り方をした図形を重ねています。