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大阪アートカレイドスコープ 2

2007年03月10日 大地の芸術祭以外

今日は、アートカレイト”スコープの座談会を聞いてきました。
発言者は本展のプロデューサー北川氏、アーティストの西野達氏、それと芝川ビルのオーナーの芝川氏でした。

芝川ビルは、今回の作品展示ではかなり協力的でしたが、それもそのはず、実はあの名村造船所跡地のアートプロジェクトのスポンサーさんらしいです。
このようなスケールの大きな企業家がいらしゃるとは大阪もまだ捨てたもんじゃないです。

私自身、今まで地元でありながらこのプロジェクトを見たことがなかったので、今年の夏は是非見に行きたいです。
(確か、たけちゃんのお知り合いが関係していたんでしたっけ?)

西野さんは、横浜トリエンナーレのヴィラ會芳亭で有名な、ケルン在住の作家です。
ドイツやスコットランドなどでは、街灯や教会の屋根の飾りを仮設の部屋で囲んで、これらがインテリアのように部屋の中にあるユニークな作品を作っておられる方です。

中でも愛知県立美術館内で、美術館壁面に設置されたピカソの絵を囲んで作った部屋の作品は秀逸だと思います。

西野氏の話をきいていると、こうしたパブリックアート実現に際しては、現地の自治体も大変理解があるらしいです。
日本では、安全面の問題により、教会の塔や街灯の先にこのような仮設の小屋を設けることは難しいようですが、海外の当局者は、何かあったときのリスクよりも、よいアーティストが空間を手がけることによってもとある建造物等が注目を集め、再評価されることのほうが意義深いと考えるようです。

また、北川氏の話もなかなか興味深かったです。
現在、アートによる街づくりで世界の中で最も進んでいるのは、フランスのナントらしいですが、(自分でも調べてみましたが、文化立市を公約に当選した市長が、市の予算の実に11%を文化予算につぎ込んでおり、その甲斐あって現在はフランスの中で「最も住みたい町」に選ばれ、企業立地も増えている)現在、横浜や金沢、またアジア圏では上海、台北、シンガポールなど近年めざましい文化戦略を打ち出している都市がこぞってナント詣でをしているとか。
ところが、そのナントの主だった関係者は、実は最近越後妻有詣でをしているのだと、北川氏はちょっと自慢げに仰っていました。
なぜ、近年、アートは美術館から街や野外へ飛び出していくのかということについては、アートを美術館という袋小路に追いやったこの100年間の美術のあり方が完全に間違えていたとも。
それは科学が、現実世界との関係性において(数字を媒介として)成り立つように、アートとは、本来、世の中との関係の中において、(人の感性を得て)成立するもので、閉ざされた美術館やギャラリーで祭り上げてしまっては駄目で、このことが美術の持つ社会的な力を弱めてしまったと。
(この点については、ヴァレリーが「絵画も彫刻も、母たる建築が死んでしまった、捨て子である。」と述べているように、美術館は、ある意味で純粋な個別的芸術作品、芸術のための芸術作品の陳列場所になってしまっています。
つまり、襖絵はガラスケースの中よりも、寺院という社会的装置の中にあった方が本来の社会的な力を発揮できるということです。)

西野氏もドイツで個展をしたとき、オープニングパーティーには関係者が大勢やってくるのに翌日からは誰も来なくなる現状に幻滅し、もう画廊は使わず、街に出よう、しかもいつも分かり易い作品にしようと決心されたそうです。

さらに北川氏曰く、東京には情報と金は集まるが、中身がない。
大阪にはかなり魅力的な資源が残されている。
きっと、必ずや大阪は復活するだろうということで話を締めくくられました。
本当にそうなれば良いと思います。
ただ、上記の府庁本館のヴァリー二の作品について、「さる筋」から主催者に対してクレームがあったらしく、この空間で行われるはずだったパフォーマンスの場所が急遽変更になってしまいました。
ドイツの例を出すまでもなく、我々がまず戦うべき相手は、こういった輩なのでしょうか。