印象に残った作品④
2009年09月18日 大地の芸術祭
同じ空き家作品でも、我々の繭の家とは大違いと思ったのは、みかんぐみ+BankART1929他の「BankART妻有・桐山の家」です。これは横浜で活躍しているBankART1929が建築家ユニット・みかんぐみと協力して、桐山集落の古民家を改築し、関係者のセミナーハウスとして利活用しているスペースです。2006年に開館し、今回の芸術祭では、交流のある50人のアーティストの作品等も室内に展示され、一般公開されていました。
改修のコンセプトは「普通の家を普通の家のように改修したい」ということらしいのですが、彼らの言う「普通」とは、世間一般の普通ではなく、とても「かっこいい」もので、当たり前のようにスタイリッシュでした。それをさらりと「普通」と言い切るところが彼らの美学なのでしょう。煤けた、真っ黒な、何十年もの記憶がこびりついた「古民家作品」を見続けた者にとっては、この桐山の家の(特に内装の)明るさ、快適さ、ポップさは、新鮮に目に映りました。しかも、これ見よがしではなく、ゆるいカフェのような何気ない空気が心地よかったです。正直言って、ここなら普通に住めるし、友だちを呼んでパーティーするのにうってつけだと思いました。
同じ空家作品でも、これは家の改築そのものがテーマであって他の古民家を利用したアート作品とは方法論は異なるけれども、都市の消費文化の最先端の感覚を農村に接合できたのは、やはり都市を拠点とする建築家やアーティスト達がこの地にやってきたからこそ。そういう意味では、これも大地の芸術祭の本旨に沿った作品だと言えると思います。
物件の維持管理や運営はおそらく簡単ではないでしょうが、プールを囲んで仲間達と記念撮影をした写真(芸術祭公式写真)を見ると、多くの他者は、「羨ましい、仲間に入れて欲しい!」と思うのではないでしょうか。まさに彼らの「基地」という言葉がぴったりです。この場所を拠点に地域との交流も大きく広がっていくことを期待します。
(建物内部の写真を紹介できず、すみません。)