印象に残った作品⑤
2009年09月19日 大地の芸術祭
今更ながらですが、2006年制作の人気作品、行武治美の「再構築」も今回、遅まきながら見に行きました。「こころの花」などもそうですが、一目で鑑賞者の心をパっとつかむことができる視覚的インパクトに優れた作品、というのが第一印象でした。
建物の規模は、小さな納屋程度で空家作品という感じではありませんが、中には入ると写真のように正面の景色を囲むように無数の丸い鏡が配置されています。鏡の一つ一つは手で切り出されたフリーハンドの円形で、工芸的な丁寧な仕事です。その鏡は壁面に緩やかに固定されているので、風が吹くと、映し出されている風景と一緒に揺れます。美しい高原リゾート地域に設置するのにふさわしい作品と言えるでしょう。
この作品のタイトルが単純に見たまんまの「鏡の家」ではなく、「再構築」となっている点も興味深いです。作者にお聞きしたわけではないので勝手に推測すると、一旦、鏡という細かいパーツに分解された風景は、パーツの集積として見ればそこに映る風景全体を再現しているかに思えますが、そこには1点1点の微妙な角度のズレ、揺らぎ、隙間、さらには鏡に映された鏡などがあり、元とは異なった複雑な風景が生まれています。風景をある種のフィルターにより異化させて見せるという意味では、本間純の「Melting Wall」にも通じる方法論かも知れません。 いずれにせよ、子供でも分かる明快さと、視覚における虚実などについての問いかけも兼ね備えた、懐の深い作品です。あと、ふと思ったのですが、大きさがちょうど茶室の大きさなので、ここで茶会を催しても面白いのではないでしょうか。(その際は床の設えに工夫が必要ですが)