4月26・27日に今年初めて繭の家を訪れました。
今回の目的は二つ。
一つは、2008年シーズン開幕に向けて、作品の冬の梱包を解くこと。
もう一つは、蓬平地区の震災復興事業の中に位置づけられた繭の家を今後いかにして集落の活性化につなげていくかを考えるワークショップに参加することです。
さて、作品の梱包を解く作業ですが、これはただ単に開封するだけでなく、場合によっては痛んだ箇所を修復する作業をする必要もあり、気が抜けません。
特に昨年の春は、ネズミに食い荒らされて大変だったので、今回もどきどきでしたが、幸い、作品の状態は良好でした。
いつ予約が入っても対応できるよう、スタンバイさせてきました。
(今年は、夏休みは毎日開館ですが、その他の時期は予約制で公開する予定です。
予約はまつだい農舞台まで。)
写真は、繭の家の前にある小さな桜の木。
この地域は、雪が解けるとともに、梅と桜と桃がいっせいに咲きます。
蓬平の住民を対象としたワークショップは、26日の夜8時から集会所で実施しました。
農舞台のO木さん、復興事業の蓬平代表のWさん、元区長の方々はじめ、20名近くの住民の方が参加してくださいました。
私のほうからは「繭の家の今後の方向」と題して、繭の家を地域づくりに生かすプランについて簡単に説明を行い、住民の方から、これまでの良かった点、悪かった点などについて、活発なご意見をいただき、課題を整理しました。
会合は、島根県桜江町が地域興しで生産している桑製品(桑茶、桑の実ジャムなど)を試食しながら、なごやかに進みました。
6月には、同じ新潟県内で繭を使った工芸で地域興しをしている朝日村を視察することが決まりました。
今回の会合で、特に嬉しかったのは、繭の家の横にある空き地に桑を植える話が正式に議題となったことです。
まだ正式に決まったわけではありませんが、「桑園風景」の復活は養蚕プロジェクトが新しい段階に入ることを意味すると思います。
できれは今年植樹できればいいと願っています。
2009年の第4回の大地の芸術祭では、まだおそらく小さな苗でしかありませんが、これを見たお客さんが、3年後に立派に育った桑が風にそよいている景色を想像し、また足を運んでくれるのではないかと・・・
写真は、その空き地です。
(この場所は、これまではゲートボール場として利用していたようです。)
今後、桑の苗の種類や植え方について、専門家の意見を聞いていくつもりです。
また、5月の連休中に農舞台で実施する「里山アート遊園地」の繭の家ブースに繭人形を展示することになりました。
コカさん制作の展示台も、その際に活用させて頂きます。
さて、いつも思うのですが、この季節の越後妻有は最高です。
雪解けとともにあらゆる生命がそれまでの遅れを取り戻すかのように成長します。
写真のショウジョウバカマもそのひとつ。
薄紫や白、ピンクなどの色の可憐な花弁が里山の林床を彩ります。
藤色のカタクリも綺麗です。
また、田んぼや池では黒サンショウウオが産卵をしていました。
田植えの準備に加え、山菜採りが最盛期を迎えています。
繭の家の大家さんのKさん宅でも、山でとった大量のゼンマイをもみほぐして天日に干す作業に追われていました。
ふきのとうもあちこちで、雑草のごとく一斉に芽吹いています。
ツクシも絨毯のように生えていますが、誰も見向きもしません。
27日のお昼ご飯は、大家さんのKさん宅で山菜料理をいただきました。
いつもKさんの奥さんは、「ありあわせのものしかないよ」と謙遜されますが、とても珍しく、贅沢な郷土料理を出して下さいます。
写真は、ふきのとうの三杯酢、あずきなのごま味噌和え、つりがねにんじんの葉のおひたし、ウドの煮物、野沢菜漬け。このほか、タケノコもいただきました。
とてもおいしかったです。
つりがねにんじんはこの地方以外でも生えているそうですが、
たいていはアクが強くて食用に向きません。
しかし、長い期間雪に埋もれているこの地域では、アクがとれてとてもおいしくなるそうです。
つりがねにんじんに限らず、雪の下に埋もれて生きている野菜は甘みが強くなる傾向があるようです。
3m近くあった雪も、すでにほとんど無くなりました。
春は駆け足で去っていくような気配が漂います。
すぐに短くも暑い夏が訪れるでしょう。
「繭の家」のお隣のTさんが、昨日お亡くなりになりました。
11月にお会いしたときは、お元気で畑もなさっていたし、宴会にも参加されていました。
年末に入院されて、そのまま病院で帰らぬ人になったそうです。
88歳とのことでした。
謹んでご冥福をお祈りしたいと思います。
Tさんは、お隣ということもあって、これまで本当によく「繭の家」の私たちの作業をお手伝いして下さいました。
(写真は、梅雨のさなか、繭の家の雑草を刈って下さるTさん)
いつもお会いするたびに、ニコニコされて、口癖のように
「誰も使わなくなった空き家で、地元の人が誰もやらない大変な作業をしてくれて有り難う」
「こんな山奥の田舎まで、都会の方がわざわざやって来てくれて嬉しい」などと、
こちらが恐縮してしまいそうなお褒めの言葉をいただきました。
Tさんは、戦前は東京で働きながら勉強されていたそうです。
結婚されてからはずっと蓬平で広い棚田を守って働いてこられたそうですが、
読書が大好きで、絵や書もよくされました。
写真は会期中、Tさんからいただいた書で、繭の家の床の間に飾っています。
これはTさんのお宅。
会期中、たくさんのお客さんが来るだろうということで、
繭の家に面した敷地内にヒマワリなどの花をTさんが植えて下さいました。
繭の家の土壁塗りを手伝って下さったTさん。
見事な鏝さばきを披露して、みんなを驚かせました。
(この写真は、雑誌ライアに掲載されたものです)
Tさんが亡くなられたことは、とても悲しいです。
しかし、Tさんの人生の最後の1年間に我々が巡り会えたことには、感謝したいと思います。
昨年の今頃はと言えば、ちょうど繭の家の最初の大掃除をしていた時期でした。
あれから1年たって、妻有はもとの静けさに包まれています。
ただ、昨年と違うことは、繭の家が整備されて、今もなお公開されていることです。
11月4日、5日に会期中運営に当たった「繭の家チーム」で久しぶりに蓬平を訪問しました。
窓から見える山並みは、すっかり紅葉に包まれています。
現在、土日は作品公開をしていますが、夏の会期中ほどには人は来ません。
久しぶりに当番しましたが、ちょうどよいくらいのペースで来場者がありました。
(逆に会期中は、しゃべり疲れてぐったりするほど人が来た・・・)
今の時期、ここに来るお客さんは、首都圏と県内がそれぞれ半々というところ。
初めて来る人よりも会期中見残したと言う人が多く来ていました。
今の時期はとっても空いているので、絶対お得です!
秋になって、会場にはコタツが登場。
TVモニターもちょっと小さくなりました。
夜は、蓬平集落の主だった方と一緒に宴会でした。
みなさん変わらずお元気そうで何よりでした。
今後とも交流を続けていけたらと願っています。
この季節、すでに稲刈りは終わり、しろかきも済みましたが、雪が降る前に野菜の収穫を終えなければいけません。
写真は、繭の家のすぐ裏手の畑での野沢菜の刈り取り風景。
区長さんのご家族が朝から1日かけて収穫しています。
この日の夕方にはこの野沢菜は大きな容器に入れられて塩漬けになりました。
ほかにも里芋の収穫、大根を干す作業に追われていました。
まさに大地とともに、季節とともに生きる生活です。
開幕の朝。
映像用モニターのマニュアルを書くイノマキさん。
このあと、ぼくはばたばたと十日町での開幕式に出席しましたが、カメラを持っていくのを忘れ、その様子は残念ながら紹介できません。
(奥に見えるモニターとDVDプレーヤーは松下電器産業(株)様からお借りしています。)
開会式に出席していた海外招待客の一行が、早速立ち寄ってくれて、びっくり!!
お客さんはひっきりなしに来られます。
こんな里山の一軒家なのに、今まで都会で発表していたとき以上に人が訪れます。
なお、土間はなかなか乾きませんでしたが、なんとかこのとおり、いい感じに完成しました。
さて、肝心の作品を紹介しましょう。
まずは、作品A「夜半の雨音」。
大箱から、この夏イノマキさんが集会所で録音してくれた「蚕が桑の葉を食べる音」が流れます。
その音に合わせて、背後の「まぶし」に入った2400個の繭が明滅します。
明かりは2系統あって、互い違いに並べているため、明滅のずれがあり、光る様子が市松模様に見えるときも。
天井や梁が、このオレンジ色に照らし出されて、美しいです。
作品B「雲の切れ間から」の小箱。
大箱と対をなします。
小箱を開けたところ。
なんだ、これは。
中を覗くことが出来ますが、ここでは紹介は出来ません。写真ではうまく撮れないのです。
意外と人気がある作品C「空に放つ」。
夜中まで一緒に吊してくれたYさん、ありがとう。
「繭の家」の看板を集落の方に書いて頂きました。
こどもたちもはしゃいでいます。
看板がついた「繭の家」。手前にある黄色いサインが目印です。
全ての作業は、開幕前日である22日のお昼頃には終えることが出来ました。
この日は、2時から集落の方を招待しての、ささやかなパーティーを催しました。
イノマキさんの映像もぎりぎりで間に合い、めでたく試写が出来ました。
とっても素敵な映像に仕上がっていて、感謝感激。
乾杯!
本当にいろいろな方にお世話になりました。
遠方から何度も駆けつけてくれた夜間工房の面々、養蚕という大変な作業をしていただいた集落の皆さん、巨大なジオラマを制作してくれたO-noliさん、蓬に魅了されて、何度も撮影に来てくれたイノマキさん、途中からチームに加わってくれて、このパーティーを段取りしてくれたこへびの重石さん、そして当初から集落と事務局と作家との間に立って、プロジェクトを牽引してくれた大木さん、その他多くの皆さん、ありがとうございました。
今回、現地に行くと、すでに繭の乾燥作業は終わっていました。
前の区長さんがちょうどよい乾燥機をもっていたので、それを集会所に運び込み、乾燥作業をしていただきました。
いつもながら作業の重要なタイミングを外して現地に入っいる自分に反省。
集落のみなさんのご苦労には本当に頭が下がります。
これは、繭の毛羽取り機。
繭の周りの毛羽をとりのぞくものです。
集落の方がきれいに保存されていたものをお借りしました。
集落を歩いていると、こどもたちが集まってきて、それぞれが飼っている蚕が繭になったものを見せてくれました。
今回の主目的は、ジオラマの表面を覆う真綿をつくることです。
こへび隊のHさん、Fさん、Tさん、富山のLeeさん夫妻、それと地元のMべえさん、Dさんにお手伝いいただきました。
繭をお湯の中で広げ、木枠に広げます。
きれいに伸びた純白の真綿は、とても美しいです。
(その前の作業では、サナギが顔を出すので、かなり気持ち悪かったですが、みんないつの間にか慣れてきました)
光に透かした真綿。きれいです。
できあがった真綿。プラチナの輝きです。
最後に真綿を干しました。
部屋いっぱいに広げられた真綿の籏は、これまた別の現代アートの作品みたいでした。
最後に記念撮影をして、今回は解散。
みなさん、お疲れ様でした!
ようやく蓬平の桑の葉も大きくなり、赤い桑の実も美しくなってきました。
6月4日に集落に蚕が届けられました。
いよいよ養蚕プロジェクトの本番が始まります。
蚕は、集落の方が中心となって、集会所内の作業所で飼っています。
蚕の数量は卵の「グラム」で表します。
今回は、5グラムで、これは約1万匹くらいらしいです。
はっきりいって、ものすごい数で、これからが大変な作業になりそうです。
このような作業を引き受けてくださった集落の方には、頭が下がります。
集会所には、集落の子どもたちも出入りして、この様子を珍しそうに見ています。
近くで見ると、こんな感じです。
この日は、「眠」にはいっており、桑の葉を食べる音の録音はできませんでしたが、首をもちあげてじっとしている様子は、けっこうかわいいです。
駄目な人は駄目でしょうが・・・
蚕が繭を貼るのは、6月末の予定ですが、気温が低めなのでこれより遅れる可能性があります。
今回は、作品の中心をなすジオラマの搬入を行いました。
O-noli氏のアトリエから発送された作品は、無事到着していましたが、梱包を外す作業だけで3時間かかってしまいました。
でも、完璧な梱包のおかげで、作品は完全な状態でした。
O-noli氏の本業の仕事ぶりも、きっとこのようにきちんとしているのだろうと想像されます。
古民家の1階に展示したところ。
本当は、奥の部屋に設置するのですが、この日は集落の方を対象に公開するので、窓のある部屋に置くことにしました。
上記とは反対の方向から。
この向きから光を当てると、蓬平が谷間にあるという地形の特徴がよく分かります。
事前にアナウンスしていたお陰で、集落の方も作品現場に足を運んで下さいました。
自分の住んでいる村の地形を鳥の目で確認できるのは、なかなか面白いとのことでした。
こどもたちもやってきて、床そうじを手伝ってくれました。
なぜか、ぞうきんの取り合いになって、我先に床を拭いてくれました。
とても展示場が賑やかでした。