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(2010 「巣立ちの部屋-Singing Birds Project」 古巻和芳 TeN 井上真喜 夜間工房)
「西宮船坂ビエンナーレ2010」に出品した作品です。
(2010 「巣立ちの部屋-Singing Birds Project」 古巻和芳 TeN 井上真喜 夜間工房)
「西宮船坂ビエンナーレ2010」に出品している作品です。
今回の作品は、旧船坂小学校2階の教室を用いた映像インスタレーションです。
音楽の先生に歌手のTeNさんを起用し、そのワークショップの歌声を映像化し、教室の引き戸の窓に投影しています。奥の廊下の突き当たりには、窓枠に舞い落ちる羽毛の影が映っています。
こどもたちと先生が歌っているのは、翻訳唱歌である「埴生の宿」と「野ばら」。
とても元気でこどもらしい歌声です。
引き戸のガラスは曇ガラスで、中の人の動きが映ります。
その背景には、ゆっくりと羽毛が舞っています。
引き戸は開けることができます。
開けると、音楽と映像はぴたりと止んでしまいます。
教室は巣立った後の巣のようになっています。
無音の中で、カーテンのゆらめき、差し込む日差しが、不在を強調します。
よく耳を澄ますと、チチチ・・・と鳥が遠くでさえずる声が聞こえます。
窓の向こうには、いつまでも変わらない船坂の美しい棚田風景が広がっています。
(上記写真のみ 撮影akiさん)
船坂の子供たちが作ってくれた紋切りの白い花、武庫川女子のボランティアの方に手伝ってもらった藁状の紙、羽毛などが敷き詰められています。いずれも学校に残された再生紙を利用して制作しました。
時間とともに、映像の見え方も変化します。
廊下の突き当たりの壁の映像のアップです。
羽根の影が舞い落ちています。
ちなみにパンフレットでは「夜閒工房」ではなく「夜聞工房」と誤植してます。これは、「夜閒」の「閒(間)」を「聞」と間違われたのだと思います。変な字を使っている我々のミスです。誤植が多いのと、読めないという苦情から、最近は「夜間工房」と表記するようにしています。
「音楽の時間」
西宮船坂ビエンナーレ2010
TeN音楽ワークショップより
ボーカル・歌唱指導・カリンバ/TeN
うた/船坂のこどもたち
ピアノ/大前チズル
レコーディング/TeN,古巻和芳
ミキシング&マスタリング/湯原大地
ミキシング&マスタリングスタジオ/studio YOU
イラストレーション/加古雅彦(夜閒工房)
写真/竹内拓也,古巻和芳
ワークショップ運営協力/船坂子供会,善照学園,西宮船坂ビエンナーレ実行委員会
企画/TeN,古巻和芳
このCDは、西宮船坂ビエンナーレ2010参加作品「巣立ちの部屋-Singing Birds Project」(古巻和芳+TeN+井上真喜+夜閒工房)において、7月18・19日に旧船坂小学校音楽室で船坂小学校のこどもたちを対象に行われた音楽ワークショップの様子を録音したものです。
1 埴生の宿~鳥のうた
2 埴生の宿・・・・・・・・・・H.R.ビショップ作曲 里美義訳詩
3 野ばら・・・・・・・・・・ウェルナー作曲 近藤朔風訳詩
4 ゴリウォーグのケークウォーク(組曲「子供の領分」より)・・・・・・・・・・ドビュッシー作曲
5 鳥のうたⅡ
6 故郷(ふるさと)(ボーナストラック)・・・・・・・・・・岡野貞一作曲 高野辰之作詞
1:事前配布用デモ音源として2010年6月大前自宅スタジオにて収録
2~4:2010年7月旧船坂小学校音楽室にて収録
6:2010年10月 TeN自宅スタジオにて収録
・旭化成CM曲「さよならの向う側」を歌っているTeNさんの、すばらしい、すばらしい歌声が録音されています。
・大人にも子供たちにも、聴いて欲しい1枚です。
・CDジャケットのレイアウトはBONさんが手がけました。「音楽の時間」の「楽」の「>」「<」が鳥のクチバシのようになっています。さりげないワザが、なんともにくいですね。
・映像の撮影の時に、ボランティアの方に手伝ってもらいました。ありがとうございます。
・船坂小学校ランチルームと、2Fレトロカフェにて販売しています。1枚1000円です。とても安いと思います。なんでこんなに安いのだろ?ちなみに、利益は、船坂のこども会に還元されます。
10月9日は西宮船坂ビエンナーレ2010の開幕式の日です。
ところが、残念ながらの大雨でした。
しかしながら体育館での開会式は、多くの地域の方や来賓、そして作家が集まり、盛況でした。
午後3時半。開会式はTeNさんと船坂のこどもたちのライブではじまりました。
当日、ステージに立ってくれたのは、7人のこどもたち。
ワークショップに参加したこどもたち全員ではありませんが、大勢のお客さんの前で、みんな一生懸命歌ってくれました。
ありがとう!
そしてピアノは大前チズルさん。2ヶ月ぶりの船坂での再会でした。
コンサートの曲目は以下の通りでした。
1 故郷(ふるさと) ・・・・CD「音楽の時間」にも収録。
2 When she loved me ・・・・ワークショップの時、こどもからリクエストのあったトーイストーリ-の曲です。
3 野ばら (こどもたちと合唱)
4 翼をください(こどもたちと合唱)
5 megumi ・・・・最新アルバム「high low」より
6 さよならの向こう側 ・・・・旭化成CM曲
おかげさまでコンサートは大成功でした。
機材を提供して下さった本田さん、PAに協力いただいたAHBの浜崎さん、子ども会の方、ご協力いただいた皆様、有り難うございました。
このあと挨拶に立った藤井ディレクターからは、歌に感動して涙が出そうになったとのお言葉をいただきました。
そんな感じで、まじめな雰囲気で行われている開会式に、怪しげな人物が・・・
(好奇心いっぱいのこどもたちには、既にいじられていました)
その正体は、出品作家の勝木繁昌さん。
作品の一環で「なんちゃって校長先生」に就任。この場で船坂小学校最後の校長先生から引き継ぎを受けました。
前半の感動のコンサートと、後半の爆笑のパフォーマンス。
とってもいい開会式でした。
(勝木さんは、夜の交流会でも大活躍。私は勝木さんのことがとても好きになりました)
教室の作品本体は仕上がりましたが、並行して進めているCDの制作は、まだ終わっていません。
CDの制作は、時間的・金銭的・労力的にかなり厳しかったのですが、
せっかく作品本体で良い音が録れたのだし、何か形に残るものをつくっておきたかったので、
TeNさんとも相談して、無理してでもやってしまおうということとなりました。
タイトルは、「音楽の時間」。
作品に使用した音源3曲(「埴生の宿」、「野ばら」、ヒバリの声)に加え、
TeNさんがワークショップに先立ってこどもたちに聞かせるために歌ったデモ音源としての「埴生の宿」、
ワークショップ2日目に大前さんが演奏したドビュッシー(MCのやりとりがとてもおもしろい! )
そしてTeNさんが今回のために新たに録り下ろした「故郷(ふるさと)」です。
このCDは、作品のお土産、お裾分けとしての意味があるのですが、
最後の「故郷(ふるさと)」は、TeNさんが自らカリンバを演奏していて、
唱歌というよりも、ワールドミュージックのような素朴かつスケール感の大きな曲に仕上がっています。
これを聞くためにだけでも、買う価値、ありです。
ちなみに「故郷(ふるさと)」は、当初は作品本体の歌の候補としても有力でした。
しかしながら、こういうシチュエーションにあまりにはまりすぎているのと、
越後妻有のボルタンスキー作品「夏の旅」でも取り上げられていたので(ピアノ演奏だけでしたが)、
私の意向で外したという経緯がありました。
でも、やはりTeNさん、歌いたかったんですね。
その分、素晴らしい出来映えとなりました。
例によってマスタリング・ミキシングは、湯原さんにお世話になりました。
10月5日、6日と連日深夜までの作業、本当にお疲れ様でした!
とにかく感謝するほかありません・・・・
またジャケット表紙は、夜間工房のコカさんにお願いしました。
当初、自分で何か描こうと思ったのですが、作風的にコカさんのほうが今回のCDに合うだろうと思い、
時間のないところ、無理してお願いした次第です。
ありがとうございました。
おかげさまで、多くの方が関わった形で、すばらしいCDが完成しました。
(CDの詳細は、コカさんが別項で紹介しています。)
9月下旬になりました。開幕まで秒読み段階です。
一気にラストスパートにかかります。
まず、カーテンを取り付けました。
窓を開けると、イメージどおりに柔らかく揺らいでくれました。
なお、教室の窓ガラスは、当初14枚が曇ガラスでしたが、それらは全て透明ガラスに交換しています。
次にプロジェクターの仕上げです。
アルコールランプ用の金網をシャッターに流用し、これは引き戸の開け閉めで上下します。
プロジェクター全体は、目立たぬよう、天井用の建材(トラバーチン)で隠しました。
その上に「白い原っぱ」(再生紙を葉っぱのように裁断したもの、紋切り花)を敷きつめます。
さらに羽毛をまきました。
風で飛ばないよう、スプレー糊で下地に接着しています。
教室内だけでなく、廊下にもプロジェクターを設置し、廊下の突き当たりに映像を投影します。
これは、階段で2階にあがって廊下を見渡した瞬間に目に入るようにしたかったためです。
プロジェクターは、神戸ビエンナーレ2007でコラボした、あさうみまゆみさんにお借りしました。
これで、ほぼ完成です。
完成は、10月3日でした。
9月20日。この日は、TOA(株)の技術チームの方が、現場で音響機器のセッティングをして下さいました。
FさんとMさんは、既に7月の音楽ワークショップの際にも現場に足を運んで下見を済ませていただいています。
アンプ、スピーカーなどの機材をご提供いただいた上にその据え付け、
そしてドアには開閉によって音が切れたり入ったりする機構を設けていただきました。
さすがは音響のプロの方です。午前中でほぼセッティングは終わりました。
午後からは、TeNさんと湯原さんも現場に合流。
実際に教室で本番どおりの音を流してみました。
とても良い音です。最初に聞いたときは、なんだかぐっときました。
その後、音のプロ4人がスピーカの位置や音量バランスを調整して、作業は完了しました。
音源については、最初からリバーブをかけることもできましたが、
教室自体で反響することも考えられたので、リバーブは全くかけないものを用意していました。
実際、この教室はよく音が反響します。
メインスピーカーは、部屋の両隅に一個づつ設置しましたが、まるでこの部屋がひとつのスピーカーの箱のようでした。
音楽が流れる時は引き戸は閉まっていますが、引き戸の上部の小窓を少し開けるだけで、十分廊下に音は漏れていきます。
面白いものですね。
また、ヒバリの声がさりげなく流れるスピーカーは部屋の一番奥にとりつけました。
ともかく、音響は申し分ないレベルに仕上がりました。
本当にTOAさんには感謝しています。
一緒になって面白がって制作して下さったFさん、Mさんのような職人スピリットをお持ちの人材がおられることが、
TOAさんの創造力の源ではないかと思いました。
これで、音響、映像、ほぼイメージどおり(イメージ以上)に仕上がりました。
あとは問題の教室内のインスタレーションの仕上げだけです。
9月19日に船坂小学校ランチルームで、こどもたちを対象に紋切り遊びワークショップをしました。
紋切り遊びとは、折り紙などを放射状に折って、切れ込みを入れて、それを開いて「紋」を作る紙工作です。
今回は、教室の床に敷き詰める「白い原っぱ」にこどもたちが折った「花」を添える目的で、彼ら自身に制作してもらいましたが、
とりあえずは楽しく切り紙遊びができればとも考えていました。
この日は、武庫川女子大学のボランティアの方数名にもお手伝いいただきました。
善照学園でこどもたちに美術を教えているアーティスト鈴木貴博さんが多くのこどもを連れてきてくれたおかげで、ワークショップは盛況でした。
いろんな形が現れるわくわく感で、みんな一生懸命に制作してくれました。
できあがった紋切り花は、白だけ作品用にいただき、色のあるものはこどもたちに持って帰ってもらいました。
ご協力いただいたみなさん、どうも有り難うございました。
9月中旬、イノマキさんから、映像(暫定版。羽毛が降っていないもの)が届きました。
ちょうど窓枠にアクリル板(ディラッドスクリーン貼付済み)もはめ込んだところだったので、試写してみました。
このディラッドスクリーンは、(株)きもとさんからご提供いただきました。
このスクリーンのすばらしいところは、投影された映像が斜めからでも鑑賞可能であることです。
細長い廊下から眺める今回の作品では、この特性はとても有り難かったです。
ちなみに、スクリーンは、透明アクリル板の内側〔教室側)に貼っています。
しかしながら、はじめて本番に近い形で試写してみて、いろいろ問題があることも判りました。
1 映像が想定より小さかった。(プロジェクターを遠ざければよいが、その分輝度が減る)
2 映像の走査線(編み目のような模様)が目立つ。
1については、プロジェクターを高輝度モードにすることである程度改善できましたが、機種の機能の制約で色味の調整ができなくなりました。
2、3については、窓を2重構造(5mmほど間隔を設ける)にするとともに、
手前の層のアクリル板には砂目調のシートをさらに貼って、スクリーンの映像がぼやけるように調整することで解決しました。
下の写真は最終的な窓の映像です。
イノマキさんと何度かやりとりをして、羽毛が良い感じで降っているところも、ちゃんと収まりました。
繭の家の映像に引き続いて、今回も大変イノマキさんには世話になりました!
こんどは音源のマスタリング作業です。
この作業は、TeNさんのアルバム制作にも携われた湯原大地さんにお願いしました。
すでに湯原さんとは7月頃から何かと相談事をお願いしており、
7月のワークショップの際にも、機材の調整のため、船坂まで来ていただいています。
私は、昔から音楽が大好きでしたが、もっぱら聞く側専門で、実技はまるで駄目なのですが、
こういった音を作りだす現場に憧れを抱いていました。
この日は、ミキシングとマスタリングを同時に行いました。
と言っても、私はただ見ているだけです。
TeNさんと湯原さんがいろいろ意見交換しながら、作業を進めていきました。
音って、リバーブをかけたり、切ったり張ったりするだけでなく、のばしたり、重ねたりとなんでもできるんですね。
CD制作の裏側を覗いたような気分でした。
おかげさまで、作品本体で使用する音源(埴生の宿、野ばら)がめでたく完成、
早速沖縄のイノマキさんにデータ便で送信し、DVD映像に取り込んでもらうこととしました。
なお、湯原さんは、実は大の現代美術ファンだそうで、この夏、瀬戸内にも2回ほど行かれたそうです。
今回の作業は「自分が楽しみで協力しています」と言って下さいました・・・・
なんていい人だと思いつつも、今回のプロジェクトがこうした人の縁に恵まれていることに改めて感謝しました。
プロジェクターは、教室内に2台用意します。
1台のDVDプレーヤーから出力した映像を分配機で分岐させ、同じ映像を二つのプロジェクターから投影します。
映像は、引き戸を開けると消えるようにします。
いろいろ考えたのですが、結局、最も原始的な方法、つまり引き戸をあけると紐がゆるんでプロジェクターランプの前にシャッターが降りて映像が消える、という方法を採用しました
引き戸は左右2枚ありますので、どちらの引き戸が開いても、二つのプロジェクターにシャッターが降りるような機構とする必要があります。
そうした前提で、プロジェクター据え付け用のボックスを制作しました。
一つの引き戸から1本のひもが伸びており、途中でそれが2本に分岐して、それぞれが2台のプロジェクターのフタ〔シャッター〕に結ばれます。
もう一方の引き戸にも同じ仕掛けを施します。
果たして、本当にこのとおり動くのか。
また、プロジェクターのシャッターは高熱となるため、燃えない素材とする必要があります。
当初はケイカル板を使用しようかと思いましたが、軽量化を図るため、
アルコールランプ用の金網を用いることとしました。
8月20日は、翌日の撮影に備えて、船坂小学校ランチルームで、スクリーンを組み立てました。
スクリーンは、幅5m必要だったのですが、弛まないように白布を張る必要があります。
たわむと影絵が歪んでしまうからですが、これが結構難しい。
結局、7月25日のBBQの時に会場脇で発見したビニールハウス用の長~い鉄の棒を背骨にして、
集落の坂口さんからお借りした植木用の脚立を支柱にして、なんとかスクリーンを準備しました。
ちなみに机やペン立ての影のようなものは、段ボール紙の切り抜きです。
さて、撮影です。
撮影は、再びこどもたちとTeNさんに集まってもらって、行います。
7月のワークショップで録音した音源を本番用に編集した10分の曲(2曲分)を用意し、
それを聞きながら演技をし、その影を白いスクリーンに映して、ビデオカメラに収めます。
カメラマンは、井上真喜さん。再び沖縄から来てくれました。
また、この日はコカさん、たけちゃん、武庫川女子大学の岩澤さんも手伝って下さいました。
7月の録音の時もそうでしたが、こどもの集中力は長くはつづきません。
一発勝負のつもりで臨みました。
こういう現場作業は、美術の人間では勝手が分からないところが多く、
TeNさんとの事前打ち合わせでシナリオなども作成していたのですが、
テレビの仕事を多く経験している井上真喜さんの意見で、あまり演技はしないことを基本にして本番に臨みました。
2回目の本番で、なんとかOKテイクが録れました。
撮影後、こどもたちは井上真喜さんの持ってきたテレビカメラに興味津々でした。
そしていつもの腕相撲大会もしました。(なぜか大人と腕相撲をしたがる子供が多い)
みんな、お疲れ様でした。ありがとう。
なお、この後、引き続いてコカさん、岩澤さんに手伝ってもらって、羽毛が降っているところの撮影も行いました。
あとは、音源をマスタリングしたものを井上真喜さんに送り、完成版のDVD映像に仕上げてもらいます。
猛暑だった2010年の夏でしたが、ちょうどお盆の頃、クーラーのない船坂小5年生教室で引き戸づくりに着手しました。
なぜ引き戸を制作するのかというと、もともとあった引き戸は窓が小さいので、映像を投影するには不向きだからです。
合計4枚の木製の引き戸を制作しないといけません。
しかも、引き戸の動きによって、プロジェクターの映像のON/OFFを制御する予定なので、
スムースに動くと同時に、強度と軽量化の両立を図らなければなりません。
引き戸の図面を引いてくれたは、神戸ビエンナーレ2007「掃き清められた余白から」でも和室を設計してくれたたけちゃん。
今回も、下見の際に寸法をとって、完璧な図面を作ってくれました。
初日は、図面どおりに1枚つくって、ちゃんとはまるかどうか確認するまでの作業です。
たけちゃん棟梁の指示のもと、組み立てを行いました。
コカさんは、グラインダーで、窓周りの剥がれたペンキを削ってくれています。(カーテンが引っかからないようにするため)
その後、8月29日には、GUNちゃんにも手伝ってもらって、残り3枚の戸板を一気に制作しました。
4枚とも、ちゃんとスムースに動きます。
隣の古い引き戸比べると判りますが、窓の大きさが全然違います。
この窓が、影絵の映像を映すスクリーンとなるのです。
たけちゃん棟梁はじめ、皆さん、暑い中、お疲れ様でした。
本当に汗まみれの毎日でしたね。
床をどうしようか。
なかなか良い考えが浮かびませんでしたが、この頃から、机や椅子をいっそ使わない方がいいのではないかと思い始めました。
というのは、南向きの教室には、きっと日の光が床に差し込むからです。
真っ白な羽毛の床に窓の光が差し込んだらきっときれいだろうから、何か救いのような光景が現れるかもしれません。
早速国立天文台のホームページから、2010年10月~11月の太陽の南中高度や方位を確認し、
窓の光の移動する様をシミュレーションしました。(ただし、手描きですが)
これでいくと、午後2時頃までは室内に光が差し込みます。
そんな訳で、床面は何かフラットな感じで、同時にシュレッダーのゴミ感をなくす方向でさらに一ひねり加えることにしました。
いろいろ考えたのですが、校内にまだ大量(数千枚)の再生紙が残っていたので、それを使うこととしました。
やはり、学校にあった素材をなるべく使いたかったのです。
再生紙をどうするかといえば、細長く裁断して、草のようにするのです。これを大量に敷き詰めます。
そうすると、真っ白な藁が床に敷かれているような感じになります。
これに白い羽毛を絡ませたら、「巣」であると同時に、白く美しい清浄なイメージにもでき、ゴミ感が消えます。
さらに、これに紋切り花を加えてみたらどうかと思いました。
折り紙や切り紙は、こどもたちが大好きな遊びだし、この花をこどもたち自身の手で作ってもらって、
それを白い原っぱの床に飾れば、ここで過ごしてきた「時間」にポジティブな意味を付与できると考えたからです。
日だまりに敷くと、こんな感じです。
結局、この方向でいくこととしました。
9月上旬に、こどもたちを対象に「紋切り花づくりワークショップ」を開催することになりました。
音楽の録音、そして映像の撮影準備、ともに順調に進んだ7月でしたが、室内の仕上げをどうするか、実は走りながら考えていました。
まずカーテンですが、ふわりと風に揺れてなおかつ薄く透けるものが必要でした。
最初は、ポリエステルのオーガンジーを試しましたが、固くて全然駄目。
結局、船場の問屋街でいいものを見つけました。
これなら、ほぼイメージどおりです。
ただ、床の仕上げがどうにも定まりません。
羽毛100%の路線を諦めたことは、前回書きましたが、「こどもたちが撒き散らした痕跡」「巣」というイメージから、
床にはシュレッダーくずを敷き詰め、その上を羽毛で覆ってはどうかと考えました。
シュレッダーは、もちろん周辺の学校から集めます。
教育現場から出た素材なので、コンセプト上も問題ないと思いました。
その拡大写真です。
ところが、この案は、夜間工房内部では、大不評でした。
曰く、ゴミにしか見えない、巣にも見えない、卒業生の鑑賞に堪えられない等々。
ちょうど、音楽チーム(TeNさん、大前さん)の仕事があまりにも見事だったので、このままでは負けてしまうといった危機感が室内チームである夜間工房に広がったようです。
シュレッダーは、すでに集落の皆さんにあちこちで集め回っていただいており、すでに20袋近く確保済み。
どうしようかと悩んでしまいました。
音楽ワークショップの翌週(7月24日、25日)は、沖縄から井上真喜さんを迎えて、撮影の予行演習をしました。
場所は、伊丹市内の写真スタジオひろです。
ひろさんには、以前に高寺めぐみさんの作品集の写真撮影をお願いしたことがあります。
今回、無理を言って、スタジオをお借りしました。(どうも有り難うございました)
初日は、伊丹市内のO-noliさんにも手伝ってもらって、こどもの影の撮影をしました。
スタジオ内に幅4mの白布を広げ、ライティングをして、その影を井上真喜さんに撮影してもらいました。
ちなみにこれは試し撮りなので、このこどもたちは船坂のこどもではありません。
5月の打ち合わせの時、井上真喜さんから「いきなり本番の撮影をしても失敗する可能性が高い」とアドバイスがあったので、このタイミングで試しておくことにしたものです。
翌日は、船坂小学校の5年生教室に乗り込み、前日に撮影した映像をプロジェクターで照射しました。
まだ、引き戸は制作していないので、代わりにその付近に白布を垂らしています。
これでだいたいの距離感はつかめましたが、スクリーンは、もう1mほど幅が広いものが必要となりました。
本番の撮影は、8月下旬です。
なお、この日はコカさんがいろいろ手伝ってくれました。
また、忙しい徹夜仕事の合間にはるばる沖縄から駆けつけてくれた井上真喜さんに感謝です。
この日の夕方、生きろ村のプロジェクトの一環で集落内で野焼き&BBQパーティーが行われていたので、参加しました。
車だったので、ビールを飲めなかったのが残念でした・・・。
7月18日、19日の両日、旧船坂小学校の音楽室にて、船坂在住の小学生13人を対象にTeNさんによる音楽ワークショップを開催しました。
当初のイメージでは、小学校5、6年生を集めて、ある程度まとまったレベルの斉唱を聞かせて欲しいと思っていましたが、
諸般の事情もあり、来てくれたのは、3、4年生のこどもたちが中心でした。
果たして、たった2日間のワークショップで彼らが本当に良い歌を歌えるところまでこぎつけることができるかどうか、不安いっぱいでしたが、TeNさんと大前さんのがんばりと熱意が通じたのか、こどもたちも一生懸命歌ってくれました。
「埴生の宿」と「野ばら」、本当にいい音が録れました。
技術うんぬんではなく、元気で、飾りのない、本当にこどもらしい歌声でした。
私の当初のイメージをはるかに超える良い音です。
この2日間は、いろんな方にお手伝いいただきました。
音楽関係では、TeNさん、大前さんのほか、レコーディングエンジニアの湯原さん、
ボランティアでは、武庫川女子大学や金沢芸工大の皆さん、
そして地元船坂の子ども会の関係者の皆さん、実行委員会の皆さん、善照学園の関係者。
どうも有り難うございました。
夜間工房からは、コカさんとたけちゃんが記録映像を撮影してくれました。
ちなみに私は当日、あまり役に立たなかったのですが、このような絵を描いて、
「埴生の宿」の歌詞の解説をしました。
いまいち、こどもたちにはうけませんでしたが。
終了後、こどもたちが隣の部屋で何やらごそごそしていたので、のぞきに行くと、
ホワイトボードにお礼の寄せ書きがありました。
とても嬉しかったです。
歌のワークショップは順調に計画が進んでいっていますが、実は教室内のインスタレーション(しつらえ)をどうするか決まっていませんでした。
基本的には、こどもの「不在」「巣立ち」を印象づけるため、教室内の机、椅子に羽毛を積もらせようというのが、当初案です。
ということで、実際に教室で机の上に羽毛を置いてみました。
羽毛自体はきれいなんですが、うーん、なんだかしっくりきません。
下手すると、「天国」あるいは「歌謡ショーのスタジオセット」みたいになってしまわないかと心配になりました。
また、布団屋さんと話をしているうちに、ダウンは扱いが難しいことが判りました。
当初は、羽根(フェザー)とダウンとを併用して、ボリュームを出そうと思っていたのですが、ダウンはものすごく浮遊しやすく、吸い込むと人体にも悪いそうなので、使用を諦めました。
フェザーは、通販で真っ白に漂白した美しいもの(上の写真でも使用)が売られていますが、かなり高価です。
以上のことから、フェザーだけで教室の床面全てを埋めるのはやめにして、他の素材を併用することを考えることとしました。
TeN音楽ワークショップについては、6月下旬から子ども会をつうじて参加を呼びかけることとしました。
2日間のプログラムで、初日は竹の手製楽器を用いてのリズム遊び、ミニコンサート、
2日目に唱歌を歌えるところまでもっていき、それを録音してそのまま作品に用います。
曲目は、翻訳唱歌である「埴生の宿」と「野ばら」に決定しました。
2曲とも翻訳唱歌としたのは、私からの要望で、137年の歴史を誇る船坂小学校には、その頃に日本に移入され、その後日本人の心の原風景となった翻訳唱歌が似つかわしいと思ったからです。
「埴生の宿」は、もともとイギリスの歌劇の曲「Home sweet home」で、TeNさんも最新アルバムで素晴らしい解釈の作品を収録しています。
「野ばら」は、シューベルトが有名ですが、今回はウェルナーの作曲のものにしました。
これは、TeNさんの意見で、ゆったりしたほうがいいという判断です。
早速、TeNさん、大前さん両氏でリハーサルが行われ、こどもたちに事前配布するデモ版も完成しました。
大前さんのピアノにあわせて、TeNさんが普段の歌唱法よりいくぶんか「先生っぽく」歌っています。
とても素晴らしい内容でした。
さすが、音楽の第一線でプロしして活動しているお二人です。
ますますワークショップ本番が楽しみになりました。
今回の作品は、まともに制作するとかなりの費用がかかります。
しかしながら、制作補助金はほとんどなく、原則、作家側の手弁当で行うビエンナーレなので、
ここはやはり企業さんのお力を借りる必要がありました。
必要機材の中で、最も重要なものの一つが、音響機器です。
こどもたちの歌声が、まるで教室の中から聞こえてくるような仕掛けが必要だからです。
そのような事情を抱える我々に救いの手をさしのべて下さったのが、
神戸市内に本社を置く音響機器メーカーのTOA(株)さんでした。
TOAさんを訪問したのは、6月でした。
・臨場感のある音質の良い音響機器であること。
(通常の協賛による機材提供の場合、1年以上前から予約が必要なので、この秋は機材はすべて出払っている)
・10月下旬から1ヶ月の長期にわたり、機材をお借りしたいこと。
(通常行う機材提供は、仕込み期間も入れて数日以内。1ヶ月は普通あり得ない。)
・スピーカー等の機材は、できれば隠したいこと。
(企業側としては、機材の姿や企業名が隠れてしまっては、協賛する意味がない)
こちらがお願いしたことは、企業側から見れば、とんでもなく勝手な内容でした。
にもかかわらず、担当者のYさんは、「ちょっとお時間をもらえますか」と言って下さり、一緒になって考えて下さいました。
後日Yさんからいただいた提案は以下のようなものでした。
・学校にあっても違和感のない壁掛け式のスピーカーを用意する。
・技術者2人を紹介するので、現場セッティングなど、協力したい。
このような有り難いお返事をいただき、7月上旬に宝塚市内の事業所で打ち合わせを行う運びとなりました。
TOA側は、Yさんのほか、技術者のFさん、その部下のMさん、こちらは私とTeNさん。
Fさんは、自宅でいろいろな日用品をスピーカーに改造してしまうという、ものづくり・音響づくり大好き人間だそうで、
そのような素晴らしい方が現場作業をお手伝いいただける上に、機材もお貸しいただけるとのこと。
こんなに心強いことはありません。TeNさんともども感謝感激でした。
ちなみにTOA宝塚事業所のロビーには、Yさんがプロデュースした、かっこいいサウンドオブジェ(彫刻)がありました。
本社には、実験的な活動で名高いジーベックホールもありますし、
シューベルティアーデ丹波の支援などのメセナ活動も積極的です。
このようにTOAさんは、文化度の高い、素晴らしい企業です。
また、今回、映像のスクリーンについても、株式会社きもと様からディラッドスクリーンの提供をいただきました。
このスクリーンは、後ろ側(リア)から映像を投影するタイプのもので、乳白色です。
ただの曇ガラスとの違いは、斜めからでも投影された映像を見ることができるということです。
細長い廊下に面した教室に投影する作品なので、これも必須でした。
(株)きもと様も、わざわざ船坂まで足を運んでいただき、現場を確認されたうえで、商品のご提供を決定して下さいました。
本当に有り難うございました。
TeNさんからZOOMのレコーダーをお借りして、新緑の船坂で鳥の声を追いました。
(鳥の声は、無人の教室に遠くから聞こえるようにして、流す予定です。)
早朝から、船坂の森を彷徨いましたが、案外、深い森には鳥はいませんでした。
谷や人里近くになれば、鳥は多いのですが、そこでは雑音が多く、なかなかうまく録音できません。
ちなみに、ZOOMはこんな感じです。
たいへん高性能の機材で、本番のこどもたちの歌声もこれで録音します。
それから、日は変わって、6月の京都。
この日は、TeNさんがヴォーカルをつとめるバンド、A HUNDRED BIRDS のピアニストであり、
TeNさんのソロ活動でもいつも一緒の大前チズルさんと京都の町屋カフェで初打ち合わせをしました。
はたして、このような美術イベントに参加していただけるだろうかと不安いっぱいでしたが、
たいへんプランを気に入っていただき、演奏にご協力いただけることに。
いろいろ具体的なアイデアも出していただきました。
7月に船坂で実施するこどもたちを対象とした「TeN音楽ワークショップ」は大変ゴージャスになりそうです。
写真は3人で打ち合わせをしたカフェです。
5月8日、正式な現地見学会に参加しました。
夜間工房とTeNさんもここで初めてのご対面です。
この日集まったのは、私〔古巻〕のほか、TeNさん、コカさん、たけちゃん、井上真喜さん、GUNちゃん。
また、他の作家さん、藤井ディレクター、実行委員会の方も見えていて、お互い自己紹介などしました。
5年生教室では、持ち込んだプロジェクターを廊下側の窓に照射したり、
曇ガラスにうつる人影の様子を確認したりしました。
この晩は、場所を変えて西宮市内で、今後の進め方の打ち合わせをしました。
歌のワークショップ、録音、マスタリングは、TeNさん、
映像の撮影と編集は、井上真喜さん。
教室の改造は、夜間工房。
室内インスタレーション、全体調整と総括は、私、古巻。
そんな感じの役割分担です。
いよいよチームとしての始動開始です。
船坂小学校は2010年4月に廃校となりました。
廃校後の4月下旬、あらためて小学校を見学し、使わせていただく教室を決めさせてもらいました。
場所は、2月に一度見た2階の5年生教室です。
ここであれば、窓から船坂の景色が望めるというのが、一番の理由でした。
音楽室や家庭科室も魅力的でしたが、教室内のたたずまいや、窓からの景色の点で、5年生教室がベストでした。
早速、教室の模型を作って、窓の光の感じをつかんでみました。
ちなみにこれが当初(実際に教室を見る前の)のイメージ案です。
教室から、音楽の授業らしい音が漏れている。
聞こえるのは、生徒と先生の歌声。
曇ガラスには、人影。
窓を開けると、そこには誰もおらず、ただ羽毛が降り積もっている。
窓からは、里山の風景が見えて、風にカーテンが揺れる。
古巻和芳です。
ようやく西宮船坂ビエンナーレ2010出品作品「巣立ちの部屋-Singing Birds Project」が完成しました。
ここで、完成までのあゆみを簡単に振り返ってみたいと思います。
2010年、2月13日、船坂小学校の閉校イベントが地元有志により開催されていました。
この日、私ははじめてTeNさんを連れて、この場所を訪れました。
船坂小学校は、137年の歴史を持つ、西宮でも最も古い小学校ですが、集落の過疎化により、2010年3月末をもって廃校となることが決まっていました。
いかにも「山の学校」然とした、温かいたたずまいの船坂小学校です。
廃校となるのは、地元の人の心情を思うと、適当な言葉も見つかりません。
しかし、ここを舞台に地元有志の力で、2010年秋にビエンナーレが開催されます。
ちょうど居合わせたディレクターの藤井さんに校内を案内していただきました。
写真は、2階の5年生教室。まだここで生徒が学んでいます。
窓からは、船坂の集落の景色が気持ちよく望めます。
巣立ちの部屋-Singing Birds Project。
この作品は、TeNさんという素晴らしい歌い手さんとの出会いなしでは生まれませんでした。
繭の家の時もそうでしたが、何かをやりたいと強く思ったとき、
ふしぎな力学が働いて、次々といろんな人とつながっていって、面白いように事が運ぶことがあります。
今から思えば、今回の作品もまさにそうしたパターンで事が運んでいきました。
その全てのきっかけは、TeNさんが一緒に組んでくれたからです。
TeNさんは、関西を拠点とするハウス・オーケストラ、A HUNDRED BIRDS のフィーチャリングヴォーカリストですが、
2008年の旭化成CM曲「さよならの向こう側」以来、昭和歌謡や唱歌にもレパートリーを広げています。
圧倒的な存在感の歌唱力をもつTeNさんですが、素顔はとても気さくで、ポジティブ。
そんなTeNさんがこどもたちと交流したら、ぜったい面白いだろう。
そうしたプロセスをもつ作品を制作したら、ぜったいにいいものになるだろう。
恐れを知らない私は、そんな確信から、身の程をわきまえず、TeNさんにオファーをした次第です。
私は、美術の人間ですが、昔から横恋慕的に音楽が好きでした。憧れがあったと言ってもいいでしょう。
一方、TeNさんはプロのミュージシャンですが、実は美術大学出身で、しかも現代美術専攻でした。
お互い、それぞれの分野に憧れを抱いていた、ということらしいです。
そんなところから、このプロジェクトはスタートしました。
当然、夜間工房の面々にも参加をお願いしました。
また、今回は映像が大きなウェイトを占めるので、繭の家の映像でお世話になったイノマキさんこと井上真喜さんにも全面参加していただくことにしました。
(イノマキさんとTeNさんとは、すでに昨年夏、越後妻有で一緒にツアー参加し、知己の仲です。)
こうして美術家、歌手、建築家、イラストレーター、映像作家という多彩な顔ぶれによるチームが出来上がりました。
(2009-2010 コカ 「ボーナスレーン」 碍子 スマートボールの玉 6mm径ユニクロームメッキ線 モーリアンカー等)
・2段ベッドの端に取り付けました。
・白いガラスのスマートボールの玉を針金のレーンに置くとコロコロ転がります。猫に見つからないようにしながら、寝る前に時々転がしています。
・以前から何とか碍子とスマートボールの玉を組み合わせられないものかと考えていました。
・碍子とスマートボールの玉は神戸の古道具屋さんsoriで買いました。
・スマートボールの玉は碍子のくぼみにピッタリ収まります。
・碍子を留めているのはモーリアンカーです。こちらもピッタリです。
・6mmのユニクロ線はこれくらい曲げるだけで、手にマメを作ります。
場所:繭の家2F
素材:繭2500個、桐箱、長持、音響システム、LEDほか
繭の家2Fに入ると、そこは真っ暗な空間です。
どこからか、雨音のようなポツポツという音が聞こえ、その音にあわせて無数の繭が明滅しています。
この音は、10,000匹の蚕たちが、桑の葉を食べている音です。(2006年夏に録音)
集落のお年寄りによると、かつては何万匹の蚕が、人間と一つ同じ屋根の下で飼われていたそうです。
夜、人が寝静まると、蚕が桑を食べる音が、雨音のように聞こえたそうです。
大箱は、この古民家にあったもの。
かつては着物などが納められていたそうです。
この大箱は、蓋を開けることができます。
蓋を開けると、真っ白な光が目に飛び込みます。
そして、雨音は止み、明滅する光は消えます。
中に納められているのは、繭、生糸、真綿。いずれもシルクの美しい輝きを放っています。
大箱の蓋を閉めると、また元の状態に戻ります。
ネットで見かけた「繭の家」の動画です。
場所 繭の家1Fにて放映
映像 約5分
繭の家-養蚕プロジェクトの一環として、2005年~2006年に撮影した映像です。(編集:井上真喜)
蓬平での養蚕風景、お年寄りの昔語り、季節の移り変わりや自然の風景、ワークショップの様子など
この映像に登場する蓬平のおばあさんは、かつて自分で育てた蚕の糸を使って、絹を織り、それを自らの花嫁衣装にしました。
おばあさんとご主人さんが、昔の養蚕作業の苦労を語ります。
また、記録的な豪雪だった2005-2006年の積雪から、雪解けにいたる様子が、
芽吹いていく春の植物とともにいきいきと記録されています。
役場が提供して下さった昔の記録映像の中に、偶然、蓬平の養蚕風景も入っていましたので、それも収録しています。
この写真のおばさんは、今もご健在です。
販売場所:繭の家、農舞台等、大地の芸術祭関連施設のほか、越後湯沢駅、ザ・プリンス・パークタワー東京の大地の芸術祭グッズコーナーなど(2010年11月現在)
キャラクターデザイン:加古雅彦
生産:蓬平集落
養蚕プロジェクトで復活した繭を素材にしたグッズです。
繭の家とその周辺に住んでいるトロル(妖精)という設定です。
2006年は展示のみでしたが、2009年からは農舞台・蓬平集落との協同により、本格的に生産を開始、一夏で約3,000個が完売するという大ヒットとなりました。
主に蓬平集落のお母さん方が手作りしています。
マユビトのキャラクターデザインは。60種類以上。
詳しくは、マユビト図鑑をご覧下さい。
この桑畑は、2009年の春に集落の方がゲートボール場をつぶして、整備して下さったものです。
整備の目的は、繭を用いたグッズの生産や、作品素材、繭の家1Fでのディスプレイ用などに用いるためです。
2006年に、集落の方が1万匹の蚕を育てて下さいましたが、
集落内にはもう桑畑がなかったので、山に自生している野生の桑の木を切るしかありませんでした。
そうした手間を省くために、繭の家の隣に桑畑を整備することとなりました。
繭の家は、作品そのものだけでなく、1Fの養蚕道具展示や、当番に入った集落の方の昔語りで成りっています。
言わば、アート作品と養蚕資料館的な要素を兼ね備えた「生きたミュージアム」なのですが、
そこに桑畑の風景が加わることによって、さらに来場者に訴えかける力が増したと思います。
2005年以降、大地の芸術祭のために夏期に集落で養蚕が行われるようになりました。
2010年現在も、主にマユビト生産のために蚕は飼われています。
写真は、集落の集会所倉庫での養蚕風景です。
毎年、7月前後に作業をしているので、タイミングが良ければ、見学ができるかも知れません。